640 ソレノイドコイルの簡単設計
コイルについてよく書かれていたので,
をscrapbox化&数式TeX化した.(著作権は上記サイトが所有する)
◆1.ソレノイドコイルの形状と呼称
フェライトやケイ素鋼板が無い空芯のソレノイドコイルを試作するためには、おおよそ下記の項目を決める必要があります。
1.内径
2.外径
3.コイルの長さ
4.巻線の方向
5.口出し線の長さ
6.使用する電線径
https://gyazo.com/23eca81cde1d33d2eaf660002ce2160d
<ソレノイドコイルの形状と呼称>
巻線の方向は、巻き始めに向かって、時計回転方向を右巻き、反時計回転方向を左巻きと決めています。 外径は、使用する電線径と巻線する層数でほぼ決まります。
通常、電線径を呼ぶときは導体径を指しますが、外径を計算するときは仕上がり外径と呼ぶ寸法を使います。 この仕上がり外径は、絶縁層などを含む電線径で、0種や1種などいろいろと種類があります。
◆2.インダクタンスとコイルの巻数
コイルの長さが有限長のインダクタンスは、下記式によって概略計算で求めることが出来ます。インダクタンス、内径、長さ、巻数を決めるのに参考になります。
$ L = 4\pi^2 \times A\times \mu s \times a^2 \times N^2 / b \times 10^{-7} [H]
$ A: 長岡係数
$ \mu s: 比透磁率
※空芯コイルでは、比透磁率$ \mu s = 1です。
$ a: コイルの半径
$ N: 巻数
$ b: コイル長
https://gyazo.com/7928f47e9660890a1c60eaea36b11a40
コイルのパラメータ
長岡(Nagaoka coefficient)係数$ Aは次表により与えられます。
https://gyazo.com/b487212277da292fddcfd8eea674522a
<長岡係数数値表>
表に無い値はグラフを描いて長岡係数を出します。
https://gyazo.com/886ce5db3aa2a6c1a61906c53bfda42c
<長岡係数グラフ>
◆3.電線径と抵抗値
上記2項で巻数が決まれば、電線の長さが概算できるので、抵抗値を推定することが出来ます。
半径aの内径では、1Tあたりの線長は$ 2\pi aなので、使用する電線の全長$ Bは
$ 2\pi a \times 巻数T
※ちなみに実際の電線を使い、長さ1mで導体径$ \Phi 0.5 \;mm(直径)と$ \Phi 0.2 \;mm(直径)の抵抗値を測定すると、下記となりました。
$ \Phi 0.5\;mm \times 1\;m \; (R = 0.09 \;\Omega)(室温20℃換算)
$ \Phi 0.2 \;mm \times 1\;m \; (R = 0.57 \;\Omega)(室温20℃換算)
※また、線径を変えたい場合は、次式を使えば目安が得られます。
$ R_2 = (\frac{\Phi_1}{\Phi_2})^2 \times R_1
$ R_1: 元の抵抗値 $ \Phi_1: 元の線径
$ R_2: 目標の抵抗値 $ \Phi_2: 目標の線径
例えば、$ \Phi 0.5\;mm \times 1\;mの抵抗値から、$ \Phi 0.2\;mm \times 1\;mの抵抗値を計算で求めると,こうなります。
$ (0.5 / 0.2)^2 \times 0.09 = 0.563 (\Omega)
◆4.実験結果
実際に試作したコイルを使い、計算値と実測値を比較してみました。
巻線条件は下記の通り
コイル内径$ 2a: $ \Phi 30 \; mm \;(\therefore a = 15)
コイル長$ b: $ 15 \; mm
電線径: $ \Phi 0.29 \; mm
巻数$ N: $ 340 \; T
◎まず、インダクタンスを計算してみましょう。
長岡係数$ Aは、
$ 2a /b = \Phi 30 / 15 = 2.00 : 係数表より A = 0.526
空芯なので、
$ \mu s = 1
従って、インダクタンス$ Lはこうなります。
$ L = 4\pi^2 \times A\times \mu s \times a^2 \times N^2 \div b \times 10^{-7}
$ = 4\pi^2 \times 0.526 \times 1 \times 15^2 \times 340^2 \div 15 \times 10^{-7}
$ = 3.601 \; mH
◎次に、抵抗値を計算してみましょう。
まず、$ 1\;m当たりの抵抗値が分かっている導体径$ \Phi 0.5 \;mmの電線を使った場合の長さを決めます。
1層当たりの巻数は、$ 15mm / 0.5mm = 30Tです。
$ 340T巻線した場合、総数は$ 11.3層となり、コイルの肉厚は、
$ 0.5 \times 11.3 = 5.65 \;mm
この肉厚を考慮し、コイルの内径と外径の平均径を出します。
$ 15 + 5.65/2 = 17.825 \;mm
$ 1T分の電線の長さは、
$ 2\pi \times 17.825 \fallingdotseq 112.0 \;mm
巻数は$ 340Tなので使用する電線の全長は、
$ 112 \times 340 = 38080 \;mm = 38.08 \;m
従って、その時の抵抗値は、次のように算出できます。
$ 38.08 \times 0.09 = 3.4272 \;\Omega
実際に使用した電線は導体径$ \Phi 0.29 \;mmなので、この電線に変えた場合の抵抗値は、こうなります.
$ R = (0.5/0.29)^2 \times 3.4272 \fallingdotseq 10.19 \;\Omega
実測値と比較すると下表のようになります。
table:比較表
計算値 実測値
インダクタンスL(mH) 3.601 3.69
抵抗値R(Ω) 10.19 8.77
抵抗値は内径と外径の平均径から計算しましたが、内径を基準にして再度計算すると、$ 8.573 \;\Omegaとなり、実測値により近づきます。
$ 2\pi \times 15 \times 340 \times 0.09 \times (0.5/0.29)^2 \fallingdotseq 8.573
※コイルの肉厚が5mm程度までなら、平均径を使うより内径を使ったほうが実測値に近い値が算出されます。
以上のようにコイルの設計は、計算によって概略が分かるものの、最終的には実物を作って確認する必要があります。
特に抵抗値は、室温や巻線するときのテンション、電線径そのものもバラツキがあるので、計算値との差が大きくなると思われます。
※注意※
この文は日本ユニバーサル電気株式会社のサイトのコンテンツ「ソレノイドコイルの簡単設計」をscrapbox化したものである.著作権は日本ユニバーサル電気に帰属する.
以上.
2024/4/8